- 2026年5月28日
新しい肺炎球菌ワクチン“キャップバックス”のすゝめ
肺炎は日本人の死因の第5位です。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/dl/10_h8.pdf
厚生労働省 令和6年人口動態統計
年間8万人の方が肺炎で亡くなります。肺炎のなかで最も多い起因菌が肺炎球菌です。
https://www.jrs.or.jp/publication/file/adult_pneumonia_2024v5.pdf
一般社団法人日本呼吸器学会 成人肺炎診療ガイドライン2024
全肺炎のうち20%が肺炎球菌です。単純計算で1.6万人が肺炎球菌による肺炎で亡くなっています。
いわゆる三大疾病と呼ばれる、日本人の死因の上位を占める、「がん」「心疾患」「脳血管疾患」の予防には莫大な医療費が注入されています。それに次ぐ死因の「肺炎」に対しては、残念ながら十分な医療資源が投入されていません。
現在、肺炎に対する予防医療は、肺炎球菌ワクチンのみです。
唯一の肺炎予防医療である肺炎球菌ワクチンですが、2014年10月に国内で定期接種となりましたが、接種率は40%未満です。アメリカなど欧米諸国は肺炎球菌ワクチンの接種率は60%台です。
なぜ、肺炎球菌ワクチンは広まらないのでしょうか。
肺炎球菌ワクチンの問題点
1.防げる肺炎は「一部」という認識
肺炎には様々な原因(ウイルス、誤嚥など)がありますが、ワクチンで防げるのは肺炎球菌が原因のもののみです。「打っても別の肺炎にかかるなら意味がない」と認識されます。
しかし、肺炎球菌ワクチンを接種した場合、全市中肺炎の発生を50%減少させ、全肺炎による死亡率を20%減少する報告があります。
国立感染症研究所 肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(成人用)に関するファクトシート
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20211953
2.過去のワクチンの面倒な接種ルール
これまで主流だったワクチン(ニューモバックスNP)は効果が5年しか持続せず、5年ごとに自費(または一部公費)で再接種する必要がありました。この制度の煩雑さや費用の負担が接種を阻む要因となっていました。
3.無症状による危機感の低下
普段は健康な人が多いため、「肺炎は自分と関係ない」と優先順位が下がりがちです。自覚症状がないまま感染し、高齢になって重症化するリスクが十分に伝わっていないのが現状です。
健康リテラシーが高いと推定される教育年数が長い集団ほど接種率は低い傾向が認められます。ワクチンの有用性について広く啓発活動を実施し,現在の健康状態に過信することなくワクチン接種を推奨する取り組みが求められています。
厚生労働統計協会 肺炎球菌ワクチン接種率の地域差と背景要因
https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/201601-01.pdf
4.慢性疾患を持つ成人世代への啓発不足
高齢者(65歳以上)の定期接種制度はありますが、糖尿病や呼吸器疾患などの基礎疾患を持つ19〜64歳の方も接種が推奨されています。しかし、この世代での認知度が極めて低いという課題があります。
現在の肺炎球菌ワクチン
令和8年4月1日より厚生労働省は高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種を、今までの23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(ニューモバックス:PPSV23)から沈降20価肺炎球菌ワクチン(プレベナー:PCV20)に変更しました。
ニューモバックスは、“多糖体ワクチン”と呼ばれるワクチンで、プレベナーは、“結合型ワクチン”と呼ばれます。
肺炎球菌には約100種類の「血清型」が存在します。病原体の表面にある構造(莢膜:きょうまく)の違いによって分類されます。この莢膜を菌体を覆って白血球(マクロファージなど)からの攻撃を防ぎます。ワクチンは莢膜の多糖体をターゲットに作られます。
多糖体ワクチンは莢膜の多糖体をそのまま精製してワクチンです。ニューモバックスは、23種類の莢膜多糖体を含む不活化ワクチンです。莢膜多糖体の抗原性に反応したB細胞が、形質細胞に成熟しIgMを産生します。B細胞のみの活性で、T細胞の免疫は介しません。免疫学的な記憶は誘導されず、効果の持続は数年と考えられます。
一方、結合型ワクチンは、精製した莢膜多糖体抗原に“キャリアタンパク”を結合しています。キャリアタンパクで免疫が莢膜多糖体を認識しやすくなります。また、T細胞の働きを誘導し、免疫記憶(メモリーB細胞)が作られ、効果が持続します。
プレベナー(PCV20)は20種類の血清型をカバーする結合型ワクチンです。ニューモバックスは5年毎接種ですが、プレベナーは生涯1回の投与で完了します。
新しいワクチン、キャップバックス
そのなかで、さらに新しいワクチンが登場しました。2025年10月に沈降21価肺炎球菌ワクチン(キャップバックス:PCV21)が発売されました。プレベナーと同じ、結合型ワクチンです。
PCV21(キャップバックス)はPCV20(プレベナー)よりカバーする血清型が1つ多いのは重要ではありません。肺炎球菌の重症化で最も問題となる、侵襲性肺炎球菌感染症(Invasive pneumoniae disease: IPD)のカバー率がPCV20 50%に対し、PCV21 78%と大きな差があります。
侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)は、肺炎球菌が血液、髄液など肺以外に菌が入る重症感染症です。菌血症、敗血症、髄膜炎から重症化し、ICU入院、死亡につながります。
血清型
プレベナー(PCV20)の血清型
1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、33F
キャップバック(PCV21)の血清型
3、6A、7F、8、9N、10A、11A、12F、15A、15C、16F、17F、19A、20A、22F、23A、23B、24F、31、33F、35B
キャップバックスは高齢者IPDでみられる15A、23A、24F、35Bを含んでいます。
2024年10月より小児の肺炎球菌定期接種にプレベナー(PCV20)が使用されるようになりました。小児ワクチンに含まれる血清型が減少し、その影響が成人にも及んでいます。過去のワクチンや小児のワクチンに含まれない血清型が増加する、「血清型置換(serotype replacement)」が進んでいます。
キャップバックス(PCV21)は血清型置換に対応し、IPDの原因となる血清型を重点的にカバーしている点が特徴です。
当院の方針
- 65歳の方:公費でプレベナー(PCV20)を推奨
- 既接種、公費の対象外:キャップバックス(PCV21)を推奨
| プレベナー | キャップバックス | |
| 定期接種 | 満65歳 昭和36年4月1日以前生:4,000円 昭和36年4月2日以降生:5,500円 持ち物:予診票 | なし |
| 任意接種 | 11,000円 | 13,000円 |
| 接種回数 | 1回 | 1回 |
よくある質問
Q: 以前ニューモバックスを受けましたが、プレベナーを接種できますか?
ニューモバックス接種から1年以上あければ可能。ニューモバックスが公費の場合、プレベナーは任意接種(自費)
Q: ニューモバックスで定期接種(公費)を受けましたが、プレベナーも公費で受けれますか?
肺炎球菌ワクチン助成は、基本、人生で1回のみ。2回目以降は任意接種(自費)
Q: プレベナー後にキャップバックスを打てますか?
プレベナー/キャップバックスは原則1回接種で完了(追加接種は通常不要)。希望があれば、プレベナー接種から1年以上あければ可能(現時点で、”最強の肺炎球菌予防手段“)
Q: インフルエンザワクチンと同時に接種可能ですか?
両者とも不活化ワクチンなので同日でも接種可能
ご予約
キャップバックスは、電話でご予約をいただいています。お気軽にお問い合わせください。
03-6913-9711
杉並ももい内科内視鏡クリニック荻窪院