- 2025年7月8日
- 2025年7月16日
アレルギー外来
主なアレルギー疾患には、花粉症・気管支喘息・アトピー性皮膚炎・食物アレルギーなどがあります。アレルギーは近年急激に増えています。日本などの先進国は衛生環境が昔より改善されたことにより、幼少期に汚染物に接触する機会が減ったことが原因といわれています。現代病のひとつといえます。住宅、飲み水、土壌、大気などの環境因子の変化が影響しています。また、ストレス、睡眠不足、かたよった食生活もアレルギーに関係しています。
アレルギー検査
アレルギー検査は、特定のアレルゲンに対する体の反応を調べるための検査です。一般的なアレルギー検査には、以下のような方法があります。
1. 皮膚テスト:
アレルゲンを皮膚に少量塗布し、反応を観察します。一般的には、皮膚に小さな傷をつけてアレルゲンを入れる「プリックテスト」や、皮膚の下に注射する「皮内テスト」があります。
2. 血液検査:
血液中の特定の抗体(IgE)を測定することで、アレルギーの有無を調べます。特定のアレルゲンに対する反応を示す抗体の量を測定します。
3. パッチテスト:
接触性皮膚炎の原因を特定するために、アレルゲンを含むパッチを皮膚に貼り、反応を観察します。
アレルギー検査を受けることで、アレルギーの原因を特定し、適切な治療や対策を講じることができます。
最新アレルギー検査 View39とMAST48
今までは皮膚にアレルギー物質を直接接触させてアレルギー反応を評価していました。最近は少量の血液で多くのアレルギー原因を同時に調べることが可能になりました。
検査項目
吸入系アレルゲン
- 室内の塵:ヤケヒョウヒダニ、ハウスダスト
- 動物:ネコ、イヌ
- 昆虫:ガ、ゴキブリ
- 樹木:スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカンバ
- 草:カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、オオアワガエリ
- カビ:アルテルナリア、アスペルギルス、カンジダ、マラセチア
- その他:ラテックス
食餌系アレルゲン
- 卵:卵白、オボムコイド
- 牛乳:ミルク
- 小麦:小麦
- 豆、穀物、ナッツ類:ピーナッツ、大豆、そば、ごま、米
- 甲殻類:エビ、カニ
- 果物:キウイ、りんご、バナナ
- 魚、肉類:マグロ、サケ、サバ、牛肉、豚肉、鶏肉
検査項目
吸入系アレルゲン
- 室内の塵:ダニミックス(ヤケヒョウヒダニ+コナヒョウダニ)、ハウスダスト
- 動物:イヌネコミックス(ネコ+イヌ)
- 樹木(春):スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカンバ
- 樹木(夏):イネ科ミックス(オオアワガエリ+カモガヤ+ナガハグサ+ハルガヤ+ギョウギシバ)
- 樹木(秋):ヨモギ、ブタクサミックス(ブタクサ+オオブタクサ+ブタクサモドキ)
- カビ:アスペルギルス、カンジダ、カビミックス(アルテルナリア+ペニシリウム+クラドスポリウム)
- その他:ラテックス
食餌系アレルゲン
- 卵:卵白、オボムコイド
- 牛乳:ミルク
- 小麦:小麦
- 豆、穀物、ナッツ類:ピーナッツ、大豆、そば、ごま、米 、木の実ミックス(ヘーゼルナッツ+クルミ+アーモンド)
- 甲殻類:エビ、カニ
- 果物、野菜:キウイ、もも、バナナ 、トマト
- 魚、肉類:マグロ、サケ、サバ、牛肉、豚肉、鶏肉
検査 | View39 | MAST48 |
View39にありMAST48にない | MAST48にありView39にない | |
プラス項目 | ガ、ゴキブリ、マラセチア、りんご | コナヒョウダニ、ナガハグサ、ハルガヤ、ギョウギシバ、オオブタクサ、ブタクサモドキ、ペニシリウム、クラドスポリウム、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンド、もも、トマト |
費用(3割負担) | 4,380円 | 4,380円 |
項目数はMAST48の方が多いですが、View39にしか含まれない項目があり、MAST48は“ミックス(複数のアレルゲンを単項目として検査)”が多く、アレルゲンを特定しづらい面があります。アレルギーの状態とご希望に合わせて検査を実施します。
アレルギー治療
抗アレルギー薬
アレルギー症状は肥満細胞から大量のヒスタミンやロイコトリエンが放出されておきる現象です。抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド薬でアレルギー反応を抑えます。

抗ヒスタミン薬は、“眠気”という避けられない副作用があります。抗ヒスタミン作用が強いほど、眠気も強まる傾向があります。最近は、ビラノアのように高い抗ヒスタミン効果がありながら、眠気が少ない薬の開発が進んでいます。眠気は脳内のH1受容体をブロックすることで現れます。アレルギー症状は鼻や目で起きるので、薬の効果(鼻や目に対する抗ヒスタミン作用)と鎮静作用(脳内のH1受容体ブロック)は別の場所で起きている事象であり、無関係であることが証明されています。つまり、「眠くならずによく効く薬」もあれば、「眠くなるしあまり効かない薬」もあります。

抗ヒスタミン薬は化学構造式で分類すると3種類に分類できます。
薬が効かなくなったら、別の化学構造式に変えてみるのも一手です。
人気抗ヒスタミン薬の特徴
ビラノア
効果が強く、眠気が少く、安価と三拍子そろっているため根強い人気があります。
空腹時に内服する必要があり、食後に内服すると効果が半減します。就寝前内服すれば大丈夫ですが、鎮静性抗ヒスタミン薬を前夜に服用すると、翌日まで影響して二日酔いするとの報告もあります。ビラノアは非鎮静制なので就寝前内服も可能です。効果と眠気のバランスが非常に良いので、好んで処方されることが多いです。
ルパフィン
ルパフィンは、花粉症の薬の中でも効能です。鼻づまりに効く抗PAF作用(他のH1 blockerにはない作用)を持つので、鼻づまりが強い患者さんに処方することが多いです。
一番の弱点は眠気です。特に10mgで効果が弱く20mgに増量した場合は眠気が強くなります。
ザイザル
市販薬のジルテック(セチリジン)の改良バージョン。ジルテックよりも眠気が少ない。
それでもH1 blockerの中では眠気が出やすい薬の1つ。就寝前1回内服なので、日常生活への影響は少ない。
ビラノアと異なり食事の影響も受けない。即効性や効力においては、ビラノア・ルパフィンよりもやや劣る。
アレロック(オロパタジン)
優れた効果を示すが、強い眠気が出る点で使いづらいことが多い。顆粒もあるので、小児も内服が可能。
アレグラ(フェキソフェナジン)
市販薬で有名。眠気の起こりにくさでトップクラスですが、その分、効果は弱い。
オノン(プランルカスト)
鼻づまりが強いときは、ロイコトリエン受容体拮抗薬を併用すると、アレルギー性鼻炎のガイドラインに記載されています。
オノン(プランルカスト)がよく選ばれます。1日2回内服ですが、眠気は少なく、上記各H1 blockerと併用できる点が最大のメリットです。H1 blockerを内服していても全く効かないという患者さんでは、このロイコトリエン受容体拮抗薬の併用で症状が劇的に良くなるケースも度々目にします。
アレルギー免疫療法(減感作療法)
抗アレルギー薬は症状の緩和には効果があります。しかし、そもそもアレルギー疾患は、“体質”や“遺伝”の要素がある病気ですので、一時的な症状の改善にはなっても根本的な治療ではありません。WHO(世界保健機関)は、「アレルギー疾患に対する原因根治療法」は、「減感作療法」のみであると表明しています。1998年、WHOはアレルギー治療に対する意見書において、減感作療法の呼称を「アレルゲン免疫療法」にしました。
減感作療法のしくみ
アレルギー性鼻炎では、まず体内に入ってきた抗原(ハウスダストや花粉)が、免疫細胞に認識され、それぞれの抗原に対する抗体が作られます(この状態を感作といいます)。こうしてできた抗体を特異的IgE抗体といいます。特異的という意味は、ハウスダストならハウスダストとだけ、スギ花粉ならスギ花粉とだけしか反応しないという具合に<反応する相手が決まっている>抗体という意味です。
特異的IgE抗体は、マスト細胞(脂肪細胞)という細胞の上にアンテナのように乗っています。体外から侵入してきた抗原(ハウスダストや花粉)がこの特異的IgE抗体にくっつくことにより、アレルギー反応が始まります。これを抗原抗体反応といいます。
抗原が特異的IgE抗体と合体すると、異物侵入のメッセージがマスト細胞に伝わります。するとマスト細胞は破裂して、多くの有害な化学伝達物質(ロイコトリエン、ヒスタミンなど)を放出します。この化学伝達物質が、鼻粘膜を刺激することによって、くしゃみ、鼻水、鼻づまりのようなアレルギー性鼻炎の症状を発現します。

ところが、減感作療法で少しずつ抗原を注射していくと、体内に特異的IgE抗体ではなく、IgG抗体という別の抗体(遮断抗体)が作られます。このIgG抗体は、抗原が体内に入ってきた時に、抗原より先に特異的IgE抗体にくっつきます。つまりIgG抗体は、抗原と特異的IgE抗体との結合を妨げる事により、アレルギー反応をおこさない(遮断抗体)ように働いてくれるのです。


減感作療法は、抗アレルギー薬などのアレルギー反応を押さえ込む対症療法とは違い、免疫が過剰反応を起こしているシステムそのものに抑制をかけ、不利益なアレルギー反応が起こらない状態を構築する根本的なアレルギーの治療法です。
減感作療法の種類
減感作療法には、次のような種類があります。
舌下免疫療法(シダキュア、ミティキュア):
舌下免疫療法は、アレルゲンを含む薬を舌の下に置いて溶かす治療法です。毎日1回、自宅で行います。自宅で毎日服用なので、通院の負担が軽減されます。ただし、3年以上の継続が必要となります。スギ、ダニのみが対象になります。3割負担の方で月数千円の費用がかかります。
皮下免疫療法(ヒスタグロビン):
腕の皮下にヒスタグロビンを注射します。ヒスタグロビンは、減感作療法の一種で、アレルギー体質そのものを改善する可能性のある治療法です。アレルギー反応に関わる細胞の働きを調整し、症状を改善します。週に1~2回の皮下注射による投与を計6回、1ヶ月前後の期間にて治療が終了します。十分な効果のあらわれない場合には、更に6回追加することがあります。最大限の効果を持続させるために、治療終了後、3~4か月に1回の追加投与が推奨されています。3割負担の方で1回1,500円程度となります。短期間で治療が終了し、アレルゲンもスギ、ダニに限定されないメリットがあります。極端に強いアレルギー体質ではなく(アレルギー検査の結果において、非特異的IgE値がさほど高値でない)、かつ多くの種類の物質に対してアレルギー反応を認める(検出されるアレルゲンの項目数が多い)方には、非常に有効な治療法です。