• 2025年7月16日

睡眠時無呼吸

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸が止まる、または浅くなる症状が繰り返し起こる病気です。睡眠の精密検査で、1時間あたりの無呼吸や低呼吸の回数が5回以上あると診断されます。睡眠時無呼吸症候群は睡眠の質を低下させ、日中の眠気や集中力の低下、さらには心血管疾患などの健康問題を引き起こす可能性があります。

主な種類

1. **閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)**: 最も一般的なタイプで、喉の筋肉がリラックスしすぎて気道が閉塞することによって発生します。いびきが伴うことが多いです。

2. **中枢性睡眠時無呼吸(CSA)**: 脳が呼吸を制御する信号を適切に送らないことによって発生します。OSAとは異なり、気道は閉塞していません。

3. **混合性睡眠時無呼吸**: OSAとCSAの両方の特徴を持つタイプです。

主な症状

– 大きないびき

– 睡眠中の呼吸停止(他者によって指摘されることが多い)

– 日中の過度の眠気

– 集中力の低下

– 頭痛

– 夜間の頻尿

– 睡眠の質の低下

診断方法

睡眠時無呼吸症候群の診断には、以下の方法が用いられます。

– **睡眠ポリソムノグラフィー(PSG検査)**: 睡眠中の呼吸、心拍数、脳波、酸素飽和度などを測定する検査です。病院に入院して行われます。

– **簡易睡眠時無呼吸検査(SAS検査:アプノモニター)**: 自宅でも取扱い可能な検査機器を使って、普段と同じように寝ている間にできる検査です。当院で可能な検査となります。

アプノモニターの方法

①アプノモニターの本体を装着

手首かお腹まわりに装着します。装着位置はどちらでも構いません

②カニューレを装着

カニューレ(細いチューブ)の突起部分を両方の鼻の穴に入れて固定し、両耳にかけます。

寝ている間に外れないよう、鼻の下や頬のあたりのチューブを付属品の医療用テープで留めます。

③SpO2プローブ(パルスオキシメーター)を装着

指先に装着します。どの指に装着しても構いません。

④電源を入れる

自動で記録が開始されます。装着後は寝ているだけで検査が終わります。

夜中にトイレに行きたくなった時は、アプノモニターを装着したまま行っても大丈夫です。

※注意:検査の晩は、飲酒しないでください。

検査結果

簡易検査の結果は、睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数である「AHI(無呼吸低呼吸指数)」という指標でみます。これに加え、日中の眠気などの自覚症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

 ・5未満: 睡眠時無呼吸症候群ではない

 ・5~15: 軽症

 ・15~30:中等症

 ・30以上:重症

重症度に応じて、以下のような治療計画を立てます。

【AHI=5未満】

特に治療はしませんが、肥満の方は減量で病気を予防します。

【AHI=5以上】

精密検査を行い、睡眠時の体の状態をさらにくわしく調べます。

【AHI=40以上】

明らかに重症なので、すぐに治療を開始します。

簡易検査の結果だけでは診断がつかない場合は、精密検査を行います。

精密検査では、体にたくさんのセンサーをつけて一晩眠り、脳波、眼球運動、あごの動き、心電図など、より多くのデータを取り、細かく記録します。

治療法

治療法は症状の重さや原因によって異なりますが、一般的な方法には以下があります。

1. **生活習慣の改善**: 体重管理、禁煙、アルコールの摂取制限、睡眠姿勢の改善などが推奨されます。

2. **CPAP療法**: 睡眠中に気道を開くために、持続的に空気を送り込む装置を使用します。

3. **口腔内装置**: 歯科医によって作成される装置で、下顎を前方に保持し、気道を広げる役割を果たします。

4. **手術**: 重度のケースや他の治療法が効果を示さない場合、手術が考慮されることがあります。

睡眠時無呼吸症候群は放置すると健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、疑いがある場合は早めに受診することが重要です。

CPAP療法

睡眠時無呼吸症候群の治療で用いる装置には、CPAP、ASV、マウスピースがあります。中でもCPAPは、最もよく使われている治療法です。

CPAPとは日本語で「経鼻的持続陽圧呼吸療法」と呼ばれ、寝ている間に専用のマスクをつけ、外気を取り込み加圧した空気を鼻から送り込むことで、睡眠中の無呼吸を防ぎます。

CPAPの装置は、睡眠時無呼吸症候群と診断され、かつ、「簡易検査で1時間40回、精密検査で1時間20回以上の無呼吸・低呼吸を認める」「毎月病院の外来を受診する」など一定の基準を満たせば、健康保険が適用されレンタルすることができます。自己負担額のは、3割負担の方で毎月5,000円程度です。

専用マスクの種類

CPAPで用いるマスクの種類には、以下のようなものがあります。

 ・ネーザルタイプ:鼻のみを覆う

 ・ピロータイプ:鼻孔に直接装着する

 ・フルフェイスタイプ:鼻と口、両方を覆う

最も一般的なのは、ネーザルタイプです。

ピロータイプは顔に触れる部分が少ないので、肌にマスクの跡が残りにくいです。しかし、ネーザルタイプに比べると外れやすいです。

CPAPを装着して眠る際は鼻呼吸が必要なのですが、鼻詰まりなどが原因で口呼吸になってしまう人は、フルフェイスタイプを用いることがあります。

いずれも、医師と相談して適切なタイプを選んでください。

CPAPのメリット・デメリット

CPAPは睡眠時無呼吸症候群の有効な治療法で、多くの患者さんにとって治療の第一選択肢となります。しかし、人によっては使用時に不快感を持つことがあります。

メリット

CPAPを使用した翌朝か数日後には、いびきや無呼吸などの症状が改善し、睡眠の質量が上がったと感じる人は多いです。特に重症の患者さんほど、効果をはっきりと実感するようです。さらに、高血圧や糖尿病など、無呼吸によって悪化していた生活習慣病の改善にもつながります。

デメリット

「マスクのつけ方」あるいは「マスクの形やサイズ」が原因で、鼻や口の周りが赤くなったりかぶれてしまうことがあります。装置から送り込まれる空気によって、鼻や喉、目、口が乾くと訴える人もいます。

その他、睡眠中に装置から送り込まれる空気を無意識に飲み込むことが原因でお腹が張ってしまったり、空気が耳に抜けて耳鳴りがすることもあります。これらの症状は、空気圧の調整で改善することがあります。

CPAP使用期間

CPAP療法は対症療法であり、病気を根本から治すものではありません。したがって、いびきや無呼吸が改善したからといって自己判断で止めてしまうと再び症状があらわれ、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

基本的には、生涯にわたって使用することになりますが、肥満が原因で病気を発症した患者さんは、減量により治療が必要なくなることもあります。

CPAP以外の治療法

マウスピース療法

就寝時にマウスピースを装着して顎を固定し、気道に空気が通るようにします。

手術

アデノイドや扁桃の肥大で気道が狭くなっている人は、摘出手術が有効なこともあります。

また、鼻に問題があって空気の通りが悪くなっている人は、鼻中隔矯正術など鼻の手術で症状が改善されることもあります。

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