- 2025年7月7日
- 2025年7月22日
骨粗しょう症
骨粗しょう症は、骨に含まれるカルシウムの量(骨量)が減少(骨が弱くなる)して、骨が折れやすくなる病気です。転倒した際に手をついて手首を骨折(橈骨遠位端)、脊椎圧迫骨折、足のつけ根(大腿骨近位部)の骨折を発症することが多いです。
骨粗しょう症は自覚症状がほとんどなく、骨折してから初めて診断されることが多いです。閉経後の女性に多いですが、最近では男性や若年者でも症状がみられるケースが増えています。その原因は、日光を全く浴びないデスクワークが1日の大部分を占めている現代生活が挙げられます。
検査
既に骨折や変形が隠れていないかを調べるレントゲン検査、骨を造る細胞、溶かす細胞の機能や骨の栄養素などを調べるための、血液や尿検査等を必要に応じて実施します。
骨粗鬆症の問診のポイント
① 脆弱性骨折(軽微な外力による骨折、外傷機転がはっきりしない骨折)
② 健診・検診などでの低骨密度値
③ 腰背部痛(高齢者では骨脆弱であり骨折を疑う)
④ 身長低下(25歳頃に最大身長に比して4cm以上の低下)
⑤ 女性では月経(初潮時期、月経不整、閉経時期・早期閉経)、出産直後なら生理再開しているか、授乳中か。子どもの有無
⑥ 臨床的危険因子(高齢、BMI低値、両親の大腿骨近位部骨折の既往、関節リウマチ、喫煙、アルコール)
⑦食事内容(偏食、食物アレルギー)
⑧運動習慣の頻度と程度
⑨ 低骨密度や続発性骨粗鬆症を来し得る疾患や治療(糖尿病、腎疾患、肝疾患、脳血管障害による麻痺)とステロイド、抗凝固薬などの使用
両親のどちらかに大腿骨近位部骨折の既往がある場合は、大腿骨近位部骨折の危険性が2.3倍高くなるといわれています。骨密度における遺伝の影響はおおよそ50%から70%程度と考えられています。骨粗鬆症自体は遺伝しませんが、リスク要因(身体のつくり)が遺伝するため、家族に骨粗鬆症の方がいる場合は、その人が骨粗鬆症になるリスクは高まります。
初診時に必要な検査
骨折の有無や骨量(骨密度)および骨脆弱を来す疾患や病態鑑別を目的としてはX線検査(胸椎2方向、腰椎2方向、両側股関節)、骨密度測定、血液検査(血中カルシウム、リン、アルカリフォスファターゼ、アルブミン、腎機能、肝機能検査)、尿検査(一般、定量で尿中カルシウム、リン、クレアチニン)が必要です。 近年、ビタミンD不足(血中25(OH)D低値)が骨折危険因子として注目されており、不足が予想される高齢者では血中25(OH)Dも測定します。
診断基準と診断手順、鑑別診断
原発性骨粗鬆症の診断は、日本骨粗鬆症学会の「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン(2015年度改訂版)」によります。
悪性腫瘍や内分泌疾患など他の原因による低骨量を呈する疾患、二次性に骨粗鬆症を来す疾患や病態と鑑別します。例えば、ALP(アルカリフォスファターゼ)高値では骨軟化症、上皮小体機能亢進症、甲状腺機能亢進症、骨髄腫、腫瘍の骨転移、Paget病を念頭に置きます。高カルシウム血症では上皮小体機能亢進症、ビタミンD中毒などとの鑑別、低リン血症では骨軟化症との鑑別、低カルシウム血症ではビタミンD作用不全、腎不全を念頭に置きます。


確定診断
原発性骨粗鬆症では除外診断です。血液・尿検査では、骨粗鬆症として特異的な血液・尿所見はありません。血清カルシウム、リンは基準値内であるが、ALPは基準値内あるいはやや高値(基準値の1.5倍以内)である。他の疾患を除外することで確定診断となります。
予防
骨粗鬆症を予防するには以下が重要です:
バランスの良い食事
運動習慣
体重を減らす
禁酒・禁煙
バランスの良い食事
食事では、骨の形成に必要なカルシウムを多く摂取しましょう。カルシウムは牛乳や乳製品、大豆製品、小魚、葉物野菜、海藻などに多く含まれています。また、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも摂取しましょう。ビタミンDは紫外線を浴びることで体内でも生成されるため、適度な日光浴も骨の健康に役立ちます。


運動習慣
運動では、骨に刺激が加わるウォーキングや筋力トレーニングなどが推奨されています。骨はその長軸に対して物理的な刺激が加わると、微量の電流が骨に伝わり強さが増すといわれています。ヒールレイズ(かかと落とし)や椅子を使ったスクワットなど比較的安全に行える運動を継続しましょう。
また、次のような点にも注意しましょう。
肥満は骨粗鬆症による骨折のリスクを上げるので、減量しましょう。
- やせ型も骨粗鬆症のリスクが上昇するため、過度なダイエットは避けましょう。適正な体重を維持しましょう。
- コーヒーや紅茶などカフェインが含まれる飲料、アルコールは取り過ぎず、適量を心掛けましょう。
- リンはインスタント食品やスナック菓子、ハムなどの加工食品、清涼飲料水に多く含まれているので、これらの食品の過剰摂取は控えましょう。
- 喫煙は控えましょう。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)
ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、運動器の機能が衰えて日常生活の「立つ」「歩く」などの機能が低下している状態を指します。
ロコモの原因となる病気には、加齢による筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などがあります。また、高血圧などの生活習慣病がある人は比較的若い頃からロコモの原因となる病気にかかりやすいことが分かっています。
ロコモを予防するには、運動をすることが最も大切です。骨粗鬆症ガイドラインでは:
開眼片脚起立

スクワット

いいほねhone.jp 「ロコもティブシンドローム」に気をつけよう(3) 2018/5/16 いいほね運営事務局
を勧めています。
またそれ以外では、ウォーキングや水中歩行、水泳やテニス、卓球から太極拳など、いろいろな運動を習慣的に続けるようにしましょう。
治療
骨粗しょう症の治療は、“骨折しない”ことが目標です。薬による骨の強化と運動による体幹の強化により転倒を予防します。治療を長く続けることも大切です。
食事療法では、カルシウムやたんぱく質といった骨の主成分となるビタミンD・Kなどの栄養素を積極的に摂取しつつ、バランスのとれた食生活を送ります。運動を習慣化することも大切です。骨は体重の負荷をかけると強くなるので、骨量の維持が図れるほか、歩行時のバランス感覚を保つという面でも役立ちます。運動は、軽度なウォーキング程度の有酸素運動(30分ほど)で十分ですが、できるだけ毎日続けるようにしましょう。
骨粗しょう症と診断されたら合わせて薬物療法も行います。患者様の多くは複数の治療薬を使用していますが、当院では薬物療法として、以下の薬を使用しております。
当院での治療薬:
作用機序 | 製剤 | 一般名 | 商品名 | 投与法 | 特徴 |
骨吸収抑制 | ビスホスホネート製剤 | アレンドロン酸 | ボナロン、フォサマック | 毎日内服・週1内服・ゼリー・点滴 | 骨が溶けるのを強力に抑える作用のある薬です。骨の密度を増やし、骨折率を低下させます。 |
リゼドロン酸 | アクトネル、ベネット | 毎日内服・週1内服・月1内服 | |||
ミノドロン酸水和物 | ボノテオ、リカルボン | 毎日内服・月1内服 | |||
エチドロン酸 | ダイドロネル | 毎日内服 | |||
イバンドロン酸 | ボンビバ | 月1静脈投与・月1内服 | |||
ゾレドロン酸水和物 | リクラスト | 年1静脈投与 | |||
エストロゲン補充療法(HRT) | エストリオール | ホーリン、エストリール | 毎日内服 | 女性ホルモンの減少に起因した骨粗しょう症に有効です。閉経期のさまざまな更年期症状を軽くし、併せて骨粗しょう症を治療する目的で用いられます。 | |
エストラジオール | エストラーナ、ジュリナ | 毎日内服 | |||
選択的エストロゲン受容体調整薬SERM製剤 | 塩酸ラロキシフェン | エビスタ | 毎日内服 | 骨が減っていくのを抑える薬です。閉経前の骨の強さを回復し、骨折の危険を少なくすることが出来ます | |
バゼドキシフェン酢酸塩 | ビビアント | 毎日内服 | |||
カルシトニン製剤 | エルカトニン | エルシトニン | 週1筋注 | 骨からカルシウムが溶けだすのを抑え、痛みを軽減します。 | |
ラスカルトン | 週2筋注 | ||||
抗ランクル抗体薬 | デノスマブ | プラリア | 6ヵ月1回皮下注 | 骨を破壊する「破骨細胞」を抑制する注射薬です。 | |
骨形成促進 | 活性型ビタミンD3製剤 | アルファカルシドール | ワンアルファ、アルファロール | 毎日内服 | 食べ物中のカルシウムの腸管からの吸収を助けます。骨形成と骨吸収のバランスも調整します。 |
カルシトリオール | ロカルトロール | 毎日内服 | |||
ファレカルシトリオール | ホーネル、フルスタン | 毎日内服 | |||
エルデカルシトール | エディロール | 毎日内服 | |||
ビタミンK2製剤 | メナテトレノン | グラケー | 毎日内服 | 骨密度を著しく増加させませんが、骨形成を促進する作用があり骨折の予防効果が認められています。 | |
副甲状腺ホルモン(PTH)製剤 | テリパラチド | テリボン | 週1クリニックで皮下注24か月・週2自己皮下注24か月 | 骨を作る働きを持つ骨芽細胞の働きを高め、骨が作られることを促進し、骨密度の改善だけでなく、骨質を改善し、骨折しにくい骨を作る効果があります。 | |
遺伝子組換えテリパラチド | フォルテオ皮下注キット | 毎日自己皮下注24ヶ月 | |||
テリパラチド皮下注キット | 毎日自己皮下注24ヶ月 | ||||
アバロパラチド | オスタバロ | 毎日自己皮下注18ヶ月 | |||
骨吸収抑制+骨形成促進 | ロモソズマブ | イベニティ皮下注105mgシリンジ | 毎月自己皮下注18ヶ月 | 骨をつくる過程である骨形成を抑制するスクレロスチンという物質の働きを抑え、骨形成を促進し、骨量の減少を抑え、骨密度を増やして骨折を予防する働きがあります。骨形成促進作用と骨吸収抑制作用の両方があります。 | |
カルシウム補充 | カルシウム製剤 | 乳酸カルシウム | 乳酸カルシウム | 毎日内服 | 骨をつくる主要な成分であるカルシウムを補充します。 |
グルコン酸カルシウム | カルチコール | 毎日内服、注射 | |||
Lアスパラギン酸カルシウム | アスパラCA | 毎日内服 | |||
塩化カルシウム | 塩化カルシウム水和物 | 毎日内服、注射 |
現時点で参照できるガイドラインを総合した薬剤治療選択をまとめます。骨粗しょう症と診断したらまず個々の患者様の骨折のリスクを把握します。
・リスクが低い場合、エルデカルシトールやSERM(女性のみ)から治療を開始。
・リスクが高い場合やステロイド性骨粗鬆症などは、ビスホスホネート・デノスマブを開始します。
・すでに複数の骨折がある場合や非常に骨密度が低い場合、複数の骨折リスク因子がある場合などはテリパラチド・ロモソズマブの投与を考慮します。
活性型ビタミンD3製剤
体内で活性化したビタミンDは活性型ビタミンD3となり小腸からのカルシウムの吸収を促進することで骨を作る過程(骨形成)を促進し、骨量の減少を抑える作用もあります。血中25-ヒドロキシビタミンD濃度が20 ng/mL未満の場合は活性型ビタミンD3製剤を検討します。エルデカルシトール(エディロール)はカルシトリオール(ロカルトロール)の誘導体であり、他のビタミンD3より血中半減期が長く骨代謝に対する効果が強いため、アルファカルシドール(ワンアルファ、アルファロール)と比べて骨密度上昇作用や椎体骨折抑制効果が高いです。また,活性型ビタミンD3は,ビスホスホネート製剤等との併用により骨密度をさらに上昇させます.
エルデカルシトール(エディロール)の骨密度上昇,椎体骨折抑制効果はグレードAであり,活性型ビタミンD3としてはエルデカルシトール(エディロール)が推奨されます.
【留意すべき副作用】
腸管からのカルシウム吸収促進作用に加え尿中カルシウム排泄も促進されることから高カルシウム血症,高カルシウム尿症に注意が必要です。エルデカルシトール(エディロール)の長期連用中に高カルシウム血症が見逃され,血管石灰化が進行し,動脈硬化や脳血管障害,心血管障害の発症がいわれています。特に高齢者で腎障害が進行することがあり,高カルシウム血症を来たしやすいため,定期的に血清カルシウム濃度(アルブミン補正要)を測定するモニタリングが必要です。 カルシウム製剤やカルシウムのサプリメントとの併用は注意してください。高カルシウム血症を疑わせる吐き気や下痢、腹痛などが見られたら、医師や薬剤師に報告してください。
選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)
体内で女性ホルモンのエストロゲンは骨吸収を抑制します。女性は閉経後、エストロゲンの分泌が減少し骨吸収が進み、骨形成が追いつかなくなり骨粗しょう症になります。
閉経後骨粗鬆症に対してエストロゲン補充療法が行われてきましたが,WHI(Women’s Health Initiative)試験において冠動脈疾患や脳梗塞のリスクを上昇させることが報告されました。SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)は、骨のエストロゲン受容体に選択的に作用します。心血管への負担や発がんリスクを減らす薬剤です。
SERMは,組織依存性にエストロゲン受容体アゴニスト(骨)またはアンタゴニスト(乳房、子宮)として作用します。SERMは椎体骨折抑制,ハイリスク患者における非椎体骨折抑制に加えて,心血管疾患や乳がん発症抑制効果もあり,閉経後女性の統合的治療として使われます。特にバゼドキシフェン(ビビアント)は脊椎以外の骨折リスクも低下させます。さらに,ビスホスホネート製剤と異なり骨代謝回転を過度に抑制しないため,長期投与が可能です。軽症の生活習慣病を合併している脆弱性骨折の無い比較的早期の閉経後骨粗鬆症患者は特に適しています。ビタミンD欠乏の場合は、ビタミンD製剤を併用します。
【留意すべき副作用】
SERMは発汗など更年期症状が悪化することや静脈血栓塞栓症の報告があります。ラロキシフェン塩酸塩(エビスタ)はワルファリンとの併用時に、プロトロンビン時間の短縮が報告されており注意が必要です。理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため、併用は推奨されていません。
ビスホスホネート製剤
原発性,続発性骨粗鬆症にエビデンスが明確な骨吸収抑制薬です。
アレンドロン酸(ボナロン、フォサマック)とリセドロン酸(アクトネル、ベネット)は骨密度増加作用,椎体,非椎体及び大腿骨近位部骨折防止効果が全てグレードAであり,骨粗鬆症治療における標準薬です。リセドロン酸(アクトネル、ベネット)は妊婦、妊娠している可能性のある婦人、高度の腎障害のある患者は禁忌です。
一方,ミノドロン酸(ボノテオ、リカルボン)は,日本発のビスホスホネートで、日本人骨粗鬆症患者を対象としたプラセボとの比較試験で椎体骨折抑制効果が明らかにされた唯一の経口ビスホスホネートです。有効性の評価は他剤よりやや劣ります。
【留意すべき副作用】
胃腸障害等の上部消化管障害が起こることがあります。また非常に稀に、顎骨壊死や非定型大腿骨骨幹部骨折等の重篤な副作用も起きます。抗RANKL抗体(デスノマブ)と同じで、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死のリスクを減らすために,投与前に口腔内の管理状態を確認し,定期的な歯科受診や適切な治療が必要です。抜歯を伴うような外科的治療が必要な場合は、ビスホスホネート薬は適応外になります。起床後すぐの空腹時にコップ1杯の水で服用します。服用後30~60分間は水以外の飲食を避け、横にならないようにしましょう。また,長期投与に伴う非定型大腿骨骨幹部骨折等もあることから,ビスホスホネート投与3~5年で骨密度上昇が頭打ちになることがあります(天井効果)。治療効果を評価して,治療継続の必要性や他剤への変更を検討します。
抗RANKL抗体(デノスマブ:プラリア)
デノスマブは破骨細胞の分化、成熟、生存に最も重要な役割を担っている破骨細胞分化因子(recepter activator of nuclear factor-κB ligand:RANKL)に対する完全ヒト型IgG2モノクローナル抗体です。RANKの結合を阻害することにより、骨吸収を著明に抑制します。強力に骨密度は増加し、椎体・非椎体・大腿骨近位部のいずれの部位の骨折も減少し、継続投与により著明な骨密度増加効果を示します。10年にわたり骨密度を直線的に増加します。骨密度増加作用,椎体,非椎体、大腿骨近位部骨折防止効果が全てグレードAです。
半年に1回の皮下注射であり、飲み忘れの心配はありません。
デノスマブ(プラリア)はテリパラチドと同様に休薬後に骨密度低下を示し、短期間で治療前値まで戻ってしまうため逐次療法が必要となります。腎機能低下例では低Ca血症の発生頻度が高く、活性型ビタミンD3の補充と厳重な経過観察が推奨されます。
【留意すべき副作用】
ビスホスホネートと同様に,顎骨壊死に注意が必要です。投与前に大きな歯科治療を終わらせること、投与中は口腔の衛生状態を良好に保つため定期的に歯科でチェックを受けましょう。プラリア投与中に歯科治療が予定された場合、「顎骨壊死研究会ポジションペーパー2016」によると、「デノスマブの血中半減期が約1か月であることなどを加味して、歯科治療の時期や内容を検討することは可能であろう」と記載されています。デノスマブ投与中に歯科治療がどうしても必要な場合は、歯科医と相談の上で治療方針を決定します。
また,投与初期に低カルシウム血症があるので、初回投与の1週間後にカルシウム値のチェックが必要です。低Ca血症を予防・治療するには、沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム(商品名:デノタスチュアブル配合錠)を投与します。
副甲状腺ホルモン(テリパラチド:テリボン)
副甲状腺ホルモンは骨を作る「骨芽細胞」の働きを活性化させるホルモンです。骨の合成に重要なホルモンです。テリパラチド(テリボン)は副甲状腺ホルモンであるPTH分子の生物学的活性を持つN末端から34番目までのアミノ酸からなるポリペプチドです。椎体骨折・非椎体骨折抑制効果があります。骨粗鬆症治療薬は、「骨吸収抑制」が多いですが、テリパラチド(テリボン)と後述のロモソズマブ(イベニティ)は、「骨形成促進」です。
テリパラチド(テリボン)の適応は骨折リスクの高い骨粗鬆症で、他の骨粗鬆症治療薬による治療を行ったにもかかわらず骨折した患者,高齢で複数の椎体骨折や大腿骨近位部の骨折のある患者,骨密度低下が著しい患者が対象です。
テリパラチドとテリパラチド酢酸塩があり、投与間隔が異なります。高額な薬剤ですが、近年、薬価の安いバイオシミラーも登場しています。
・テリパラチド(フォルテオ):毎日1回 自己注射
・テリパラチド酢酸塩(テリボン):週1回 皮下注射(クリニックで注射)もしくは 週2回 自己注射
投与期間は24カ月までです。投与終了後に無治療だと急速に骨密度が低下します。終了後は,ビスホスホネート製剤やデノスマブ等の骨吸収抑制薬に切り替えて治療を継続します。
【留意すべき副作用】
悪心,嘔吐,高カルシウム血症,食欲不振,頭痛
抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ:イベニティ)
ロモソズマブ(イベニティ)はWntシグナル抑制因子スクレロスチンの作用を阻害して,強力な骨形成促進作用と持続的な骨吸収抑制作用により著しい骨密度上昇と骨折抑制効果を発揮します。
テリパラチドと同様に保険適用は「骨折の危険性の高い骨粗しょう症」です。
毎月1回につき2本を皮下注射します。骨形成促進作用が一過性なので投与期間は12カ月に限定されています。その後はデノスマブやビスホスホネート等の骨吸収抑制薬に切り替えて継続します。
【留意すべき副作用】
心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞)の副作用が報告され、添付文書にも「有益性投与」の記載が追加されました。心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症の既往がある場合や動脈硬化のリスクが高い方は使用を避けたほうがよいです。血中カルシウム濃度の低下する場合があり定期的な採血は必要です。血栓症のリスクが低く、これまでの治療に抵抗性で、複数の椎体骨折がある場合などには投与を検討します。
骨粗鬆症の治療に骨代謝マーカーを用いられるようになりました。骨代謝マーカーは血液検査により測定できます。
骨代謝マーカーとは、骨の新陳代謝に関わる物質で、骨形成や骨吸収の程度を示す指標です。代表的な骨代謝マーカーには、以下のようなものがあります。
骨形成マーカー: Osteocalcin (OC)、骨型アルカリフォスファターゼ (BAP)、I型プロコラーゲン-N-プロペプチド (P1NP)
骨吸収マーカー:ピリジノリン (PYD) 、デオキシピリジノリン (DPD) 、I型コラーゲン架橋N-テロペプチド (NTX)、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ-5b (TRACP-5b)
骨マトリックス関連マーカー: 低カルボキシル化オステオカルシン (ucOC)、ホモシステイン (HCY)
選択する治療薬の特徴に合わせて、計測すべきマーカーを選択します。
骨吸収を抑制する治療薬 ➡︎ 骨吸収マーカー
骨形成を促進する治療薬 ➡︎ 骨形成マーカー
骨質を改善する治療薬 ➡︎ 骨質マーカー