- 2025年7月12日
- 2025年7月22日
高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症とは
血液中の尿酸が7.0mg/dlを超えると、高尿酸血症です。
尿酸が高いだけでは、自覚症状はありませんが、血液中に尿酸が多くなると、溶けきれなくなり結晶化します。特に、血液循環が悪く体温の低い手足の関節などにたまりやすく、この固まりを尿酸塩結晶といいます。この結晶が関節内ではがれ、それを白血球が処理する際に炎症が起きて腫れ上がるのが痛風の発作です。尿酸塩結晶はイガグリのような形をしています。このイガグリ尿酸結晶が関節・足先や耳たぶなどにたまり激痛の痛風発作が起こります。また腎臓にたまって結石ができると背中に痛みが生じ、尿管や膀胱に移行するとその部分で炎症を起こし、激痛を生じます。尿管で起こった場合は尿管結石、膀胱で起こった場合は膀胱結石といい、これらを合わせて尿路結石と言います。症状がない場合であっても、尿酸が高い状態が持続すると脳卒中、心臓病などの循環器病に至る場合もあります。
高尿酸血症や痛風・尿路結石は、男性に圧倒的に多い病気です。女性は女性ホルモンによって尿酸値がコントロールされるため、男性に比べれば少ないですが、女性ホルモンの分泌が低下する閉経後はやや増加します。
尿酸は腎臓から捨てられる老廃物の1つです。抗酸化物質もあり必ずしも悪者ではなく、ある程度は体に必要な物質です。低尿酸血症の人は活性酸素によって血管が傷み、動脈硬化が進みやすくなります。
尿酸は多過ぎても血管の内皮細胞に炎症を起こし血管障害を進めます。痛風は高尿酸血症の局所的な1つの病態にすぎません。痛風発作よりももっと怖いのは、血管の内皮細胞が炎症を起こし、血管障害が進むことです。
高尿酸血症の診断には「6、7、8、9のルール」というのがあります。
尿酸値
6 mg/dl 体にマイナス
7 mg/dl 高尿酸血症 → 生活習慣の改善
8 mg/dl 腎障害、高血圧、糖尿病を伴う場合は薬物治療
9 mg/dl. 薬物治療
つまり、尿酸値を6.0㎎/dL以下を維持することが予防のためには重要です。
病型分類
高尿酸血症は、尿酸産生が過剰となる“産生過剰型”と、尿酸の排泄率が低下している“排泄低下型”に分けられます。両者の鑑別は尿中の尿酸の量をクレアチニンとの比で行います。尿中尿酸が高ければ尿酸/クレアチニン比は高くなります。“産生過剰型”です。尿中尿酸が低ければ尿酸/クレアチニン比も低下します。“排泄低下型”です。病型によって使う薬剤が異なります。
検査項目 | 基準値 | 排泄低下型 | 産生過剰型 |
尿中尿酸排泄量(mg/kg/h) | 0.48-0.51 | 0.47以下 | 0.52以上 |
尿酸クリアランス(mL/min) | 6.2-12.6 | 6.1以下 | 6.2以上 |
尿酸クリアランス/ クレアチニンクリアランス比(%) | 5.5-11.1 | 5.4以下 | |
尿中尿酸/クレアチニン比 | 0.5 | 0.5以下 | 0.5以上 |
高尿酸血症の予防
予防には、主に以下が有効です。
- 食事中のプリン体の摂取が多い人はそれらを控える。プリン体は、白子類、レバー類、干物(マイワシ・マアジ・サンマ)などに多く、肉・魚全般にも中程度含まれる。
- 野菜、果物、豆類、全粒穀類などをバランスよく摂取する。
- 尿路結石予防のために水分を多くとる。
- すべての種類のアルコールの量を減らし、特にビールは控える。
- 甘い飲み物やジュースを控える。
- 脈が少し速くなる程度の有酸素性運動を行う(少なくとも10分以上の運動を合計1日30分以上または60分程度が最適)。
- 肥満がある人は、食事の見直しと運動で肥満を解消する。

尿酸値に影響する食事内容、食事パターンは以下の通りです:
尿酸上昇 尿酸低下
アルコール ビタミンC
糖質 DASH食
肉類 地中海食
魚介類 野菜・果物
健康食品 乳製品
コーヒー
プリン体は基本的に肉や魚介類など動物性食品に多く含まれ、特に内臓肉や脂肪分の多い部位に多く含まれます。野菜や果物にはほとんど含まれません。プリン体はヒポキサンチンを経てキサンチンが生成され尿酸へと代謝されます。プリン体をヒポキサンチン、キサンチンに変えるのが、“キサンチンオキシダーゼ”と呼ばれる酵素です。生成された尿酸は腎臓から尿となり排泄されますが、一部は尿細管から再吸収されます。


糖はプリン体ではありませんが、肥満や糖尿病になるとインスリン抵抗性が高まります。インスリン抵抗性になるとキサンチンオキシダーゼが活性化され、どんどん尿酸が産生されます。また、腎臓の近位尿細管にある尿酸トランスポーター(URAT1)による尿酸の再吸収を亢進させます。腎臓の糸球体でいったん捨てたはずの尿酸の再吸収が進み、結果として尿酸の排泄量を減らしてしまうのです。糖質の制限も尿酸値の抑制に重要です。

尿酸が多い食品は避けているのに、尿酸値が高いときは健康食品が原因であることが意外と多いです。種類によってはプリン体を多く含む健康食品があるので注意しましょう。
プリン体を多く含む健康食品:
クロレラ
ローヤルゼリー
ビール酵母
スピルリナ
DNA/RNA
青汁
過度な運動や無酸素性運動を行うと、尿酸が産生されやすくなり、尿酸値が上昇しますので、尿酸がすでに高い人の場合は、ウォーキング程度の軽い有酸素性運動にとどめる必要があります。筋肉痛が起きるくらいの激しい運動をすると、筋肉の細胞が壊れます。すると細胞の老廃物である尿酸が増えます。息が切れて筋肉痛になるほどの激しい運動は控えましょう。
またよく「焼酎ならば大丈夫」と考える人がいます。蒸留酒にはほとんどプリン体が含まれていません。ただし、アルコール自体に尿酸値を上昇させる作用があるため、大量に飲酒することは避けましょう。飲酒したときは、お水やお茶などでの水分摂取を行うと血液濃縮による尿酸上昇を緩和することができます。

高尿酸血症の治療
食事療法と運動療法で適正体重を保ちますが、激しい運動は痛風発作のきっかけになることがあります。必ず医師に相談してから適切な生活習慣の改善を行うようにしましょう。尿酸値が高い場合には、尿酸の生成抑制・尿酸の排泄促進の効果がある薬剤を使った薬物療法を行います。ただし、急激に尿酸値を下げてしまうと痛風発作を起こしやすいため、少しずつコントロールしていきます。また、尿酸値が十分に下がっても血中の尿酸結晶が溶けるまでには時間がかかりますので、しっかり治療を続けていきましょう。
薬物治療
尿酸降下薬は、尿酸生成抑制薬および尿酸排泄促進薬があります。
尿酸生成抑制薬 ←尿酸産生過剰型
アロプリノール(ザイロリック)
フェブキソスタット(フェブリク)
トピロキソスタット(ウリアデック)
尿酸排泄促進薬 ←尿酸排泄低下型
ベンズブロマロン(ユリノーム)
プロベネシド(ベネシッド)
ブコローム(パラミヂン)
ドチヌラド(ユリス)
尿酸排泄低下型に尿酸排泄促進薬、尿酸産生過剰型に尿酸生成抑制薬を選択します。尿酸排泄促進薬を使用する際には尿アルカリ化薬(ウラリット)を併用します。中等度以上の腎機能障害例には尿酸生成抑制薬を選択します。アロプリノールを腎不全の方に使用するときは、腎障害の程度に合わせて投与量を調節します。尿路結石の既往ないし合併がある場合も尿酸生成抑制薬を使用します。なお、ACRのガイドラインではアロプリノールまたはフェブキソスタットを第1選択とし、尿酸排泄促進薬(プロベネシド)が代替とされています。また、EULARのガイドラインではアロプリノールを第1選択とし、効果不十分またはアロプリノール不耐容ならフェブキソスタットへ変更するとされています。
尿路結石を合併する場合も尿酸生成抑制薬を選択します。
心血管疾患を有する痛風患者を対照にした海外臨床試験において、アロプリノール群に比較してフェブキソスタット群で心血管死の割合が高かったとの報告があり、フェブキソスタットを投与する場合には心血管疾患の増悪や新たな発現に注意します。

痛風発作の治療
痛風発作時に血清尿酸値を変動させると発作の増悪を認めることが多いため、発作中に尿酸降下薬は開始しません。やだし尿酸降下薬投与時に痛風関節炎が起こった場合は、尿酸降下薬は継続します。
痛風発作の治療は、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)・グルココルチコイド・コルヒチン(低用量)を用います。
a. 発作前兆期
コルヒチン1錠(0.5mg)を用い、発作を頓挫させます。前もってコルヒチンを処方し携行してもらいます。
b. 発作の極期
NSAIDsを短期間(1~2日)に大量投与します(NSAIDsパルス療法)。NSAIDsが使用できない、無効もしくは多発性に関節炎を生じている場合は、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン〈プレドニンなど〉)15~30mgを経口投与します。低用量コルヒチン投与では発作12時間以内に1.0mg、その1時間後に0.5mgを投与する。
c. 発作予防
尿酸降下療法を開始する際、痛風発作が頻発する場合、コルヒチンを1日1錠連日服用します(コルヒチン・カバー)。