• 2026年1月8日

花粉症治療の”切り札” 〜ゾレア〜

ゾレア(オマリズマブ)は、既存治療で効果不十分な重症・最重症のスギ花粉症(12歳以上対象)に用いられる注射薬で、アレルギー反応の根本原因であるIgE抗体をブロックし、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなど、花粉症のほぼ全ての症状を改善する画期的な治療法です。2~5月の期間限定で、2~4週間おきに皮下注射し、アレルギー反応の根本から抑えることで、薬を飲んでも症状が治まらない方や眠気を避けたい方にも効果が期待されます。

  • 毎年重い花粉症に悩まされ、薬を飲んでいるが効かない
  • 薬を飲むと眠くなり、仕事や勉強に集中できない
  • 受験生

対象となる方

  • 重症以上のスギ花粉症: 既存の治療薬(抗ヒスタミン薬など)を1週間以上服用しても、鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの強い症状が残る
  • 血液検査の結果:
    • スギ花粉抗体(特異的IgE)の数値がクラス3以上
    • 血清総IgE濃度が規定の範囲内(30〜1,500 IU/ml)
  • 年齢: 12歳以上
  • 体重: 20〜150kg

方法

  • 作用: アレルギーを引き起こす原因物質「IgE抗体」に直接結合してブロックし、症状を根元から抑えます。
  • 投与間隔と投与方法: 4週間または2週間ごとに、クリニックで皮下注射を行います。
  • 期間: 一般的にスギ花粉の飛散期間(2月〜5月)に合わせて期間限定で投与されます。

費用

ゾレアは高価な薬剤であり、窓口での負担額は患者の体重やIgE濃度(投与量)によって大きく異なります。 

  • 自己負担額(3割負担の場合): 1ヶ月あたり 約4,500円〜70,000円 程度と幅があります。投与量・回数によって金額が変わります。
  • 高額療養費制度: 年収や支払額によっては高額療養費制度(限度額適用認定証)の対象となり、負担が軽減される場合があります。

  限度額適用認定証 国民健康保険 

  https://www.city.suginami.tokyo.jp/s035/shinseisho/8721.html

  限度額適用認定証 全国健康保険協会

  https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r121

  ノバルティス社のホームページの季節性アレルギー性鼻炎コーナーで概算費用を確認できます。

  https://www.okusuri.novartis.co.jp/xolair/pollinosis/medical-expenses/xolair

  • 小児:小児は12歳以上が適応ですが自治体によってはこども医療費などの医療費助成が受けられます。

  杉並区 子ども医療費助成(マル乳・マル子・マル青医療証)

  https://www.city.suginami.tokyo.jp/s053/1043.html

効果はそのシーズン限りとなります。そのため、ゾレア®の適応となった重症花粉症患者さんは、6月以降になればスギ舌下免疫療法を考えてみましょう。舌下免疫療法はスギ花粉症に対する唯一の根本治療です。

食物アレルギーに効く可能性

ゾレアは花粉症以外にも、気管支喘息、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎の治療にも使われています。

最近、ゾレアが食物アレルギーに効く可能性が注目されています。米国食品医薬品局(FDA)は2024年2月に、ゾレアを食物アレルギーの増強療法として承認しました。

なぜ、ゾレアは食物アレルギーに効くのでしょうか?

それを理解するには、アレルギーの基本を理解する必要があります。

アレルギーは4つのタイプに分かれます GellとCoombs分類

名称反応代表疾患
I型即時型
アナフィラキシー型
抗原に対して過剰に産生されたIgE抗体が、マスト細胞から化学伝達物質が放出アトビー性皮膚炎
気管支喘息
蕁麻疹
アレルギー性鼻炎
食物アレルギー
II型細胞障害型抗原に対して作られた抗体が赤血球、白血球、血小板などを破壊。IgG、IgM、補体活性化。自己免疫性溶血性貧血
血小板減少症
不適合輸血
重症筋無力症
薬剤アレルギー
III型免疫複合体型抗原と抗体が結合し免疫複合体を形成。免疫複合体が組織に沈着し炎症を起こす糸球体腎炎
血清病
慢性関節リウマチ
全身性エリテマトーデス
IV型遅延反応型抗原が感作T細胞に作用し、リンホカインが放出されて炎症接触性皮膚炎
ツベルクリン反応
臓器拒絶反応

このなかで、花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)は、“I型アレルギー(即時型)”に分類されます。

I型アレルギーI型アレルギーは、即時型アレルギーと呼ばれ、IgE抗体という免疫タンパク質が関与し、アレルゲンと結合するとヒスタミンなどの物質が放出され、炎症や様々なアレルギー症状を引き起こします。

感作

  • アレルゲンが体内に侵入します。
  • 抗原提示細胞がアレルゲンを取り込み、ヘルパーT細胞に情報伝達します。
  • ヘルパーT細胞の指令でBリンパ球が活性化され、アレルゲンに特異的なIgE抗体が作られます。
  • このIgE抗体が肥満細胞(マスト細胞)の表面にある受容体に結合します。
  • このIgE抗体と肥満細胞が結合した状態が「感作状態」であり、この段階では症状は出ません。

誘発

  • 感作された状態で、再び同じアレルゲンが体内に侵入します。
  • アレルゲンが肥満細胞上のIgE抗体に結合し、IgE受容体を架橋(クロスリンク)させます。
  • これにより肥満細胞が活性化(脱顆粒)し、ヒスタミンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出されます。
  • この化学伝達物質が血管拡張、平滑筋収縮などを引き起こし、蕁麻疹、咳、鼻水、呼吸困難などの即時型アレルギー症状(I型アレルギー)が数分〜数時間以内に現れます。 

ゾレアは、I型アレルギーに効果があるので、花粉症以外に気管支喘息、アトピー、蕁麻疹に効果があります。

食物アレルギーも、“I型アレルギー”なので、理論的にはゾレアが効くはずです。実際に、米国ジョン・ホプキンス大学で行われた臨床試験でその有効性が確認されました。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2312382

現在、国内ではゾレアは食物アレルギーの治療薬としては承認されていません。米国での承認を受け、日本国内でも食物アレルギーに対するゾレアの承認に向けた動きが加速すると考えられ、早期の承認が望まれています。

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